「うちの犬、嫌がらせするんです」
愛犬についてのご相談の中で飼い主様からよく聞くワード「うちの犬、嫌がらせするんです」これが今回のお題です。
他にも「腹いせ」「復讐」「報復」という表現をされる方もいらっしゃいます。
わんこの行動の中にはヒトに当てはめて考えると、まるで「嫌がらせ」をしているように見えてしまう行動があります。
例えば・・・
- わんこだけ留守番させた時にパパの枕でオシッコをした
- かまってあげずにいたら大事な書類をビリビリに破られた
といった例がありました。このような場合、「置いていった」や「かまってあげなかった」という飼い主さんが負い目を感じるような後ろめたい気持ちが合わさっていることがほとんどです。そのネガティブな状態から「報復」「復讐」というイメージが湧いてしまい「嫌がらせ」だと感じてしまうのだと思います。
確かに枕にオシッコをする行為は大変な侮辱行為です。でもそれは“人間界で”の話です。
冷静に考えて、果たしてわんこが「人間の大切にしている物に排泄をする」ことが「飼い主を困らせるためにする」行為だと言えるでしょうか。もちろんこればっかりはわんこに直接聞けませんが、行動をひも解いていくと「嫌がらせ」が大きな誤解であることが見えてくるのです。
「嫌がらせ」と思っていたことは大きな誤解かも?
なぜ、例のような行動をするのか。全ての状況やわんこに当てはまることではありませんが、大抵の場合は『不安・興奮・葛藤』からくる行動が多くみられます。『不安』が大きい場合「排泄する・吠える・破壊行為」の3大不安行動が起きやすかったりします。
「置いて行かれた嫌がらせにこれみよがしにパパの枕にオシッコしたの!」と憤る飼い主さん、ちょっと深呼吸して、わんこ視点でこの場面を想定してみましょう。
考えられる例として、いつもと違う様子で置いていかれたことに不安が生じていた。元々留守番が得意ではなかった。他にも、シニア犬や体調不良のわんこは不安を感じやすくなっていたりします。
そういった不安を感じた際、愛着のあるニオイ(例の場合は「大好きなパパのニオイ」のする枕)を見つけてそこで不安症状の排泄行動が起きてしまった。
あの「枕へのオシッコ」は侮辱行為ではなく「置いて行かれた不安」を表しているとしたら・・・嫌がらせだ!と言って叱れませんよね。
さて、本当の嫌がらせとは!?
私には5歳上の姉がいます。今となっては理解のある良い姉ですが、子供の頃は姉がどんなに理不尽なケンカを売って来ても敵うはずのない相手でした。姉は口も達者で体力だって戦略だって遥か上。幼い時の5歳差は歴然でした。
そんな小学生だったある日、文句を言いに姉の部屋のドアを開けたのですが、その途端物が飛んできてすぐにドアを閉めることに。何か言っても、物を投げ応戦しても100倍返し。「・・・やっぱり今日も勝てない。」諦めかけた次の瞬間、妙案が浮かんできたのです。
外でカマキリを捕まえて来て姉の部屋に投げ入れました(爆)
「何をしても勝てないならせめて嫌がらせをしてねーちゃんを困らせてやる!」という本当に子供の考えそうなくだらない嫌がらせです。
投げ入れた直後、姉の悲鳴が聞こえるはず・・・あれ?無音。そう、カマキリを捕まえに行っている間に姉は出かけていました。
数日経って、姉の部屋から悲鳴とヘルプの声。慌てて行くとあのカマキリ。「ごめんね、まだいたの?」と小声でそっと謝りながら外に逃がしてやり、姉にはお礼なんて言われちゃってして(笑)
誤解を恐れずに言えば「嫌がらせ」は高度な行動で、わんこはそこまで高度ではなく『もっとシンプルで素直』。
何かの思い込みや擬人化による弊害でわんこが理不尽な叱責を受けぬよう願っています。
カテゴリ: ドッグトレーナーのコラム コラム, 嫌がらせ, 犬