このタイトル、わんこと金魚鉢が何の関係があるのか…。別にわんこを金魚鉢に入れるとかそんな悪趣味な話ではありません!
環境エンリッチメント※という視点で個人的に共通点を感じることがあり今回のお題としました。
※環境エンリッチメントとは…飼育動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らして、動物の福祉と健康を改善するために、飼育環境に対して行われる工夫を指す。 飼育動物の福祉を向上させるもっとも強力な手段の1つとされる。(ウィキペディア引用)
環境エンリッチメントという視点から
金魚の飼育について、10年以上前の話題になります。2005年頃イタリアのモンツァという地区で「一般的な球状の金魚鉢での飼育禁止」という条例が可決されました。これは動物愛護と動物福祉の観点からで、条例を定めた町議会関係者は「丸い形の金魚鉢は、金魚からは外の景色が歪んで見え、その歪んだ景色に金魚が苦しめられてしまう。また、フィルターがないことは良い環境と言えず、ペットを飼う上で正しく飼うことを市民に伝えるための法律である」とのこと。
「球状の歪んだ景色」に関しては金魚の視力などの観点から異論・疑問もあるようですが、狭さや水質に関して言及されていることは飼育する上での最低限の配慮で当然のことと思います。魚らしく泳ぎ回れない、また水質が悪い中で過ごさせることは寿命を縮めかねない動物福祉に反することといえるでしょう。わんこで言い換えれば「狭いケージに入れっぱなし」「空気の悪い中で日常生活」健康に良いわけがありません。
金魚にとって水草は「隠れ場所=落ち着ける場所」で、人工的なテトラポットや土管の中よりも水草と水草の陰を好んで選ぶそうです。わんこに言い換えても「休まる場所」は重要で以前のコラムでも触れています(参照:わんこと寝顔)
しかし金魚は本来観賞用として作られてきた歴史から「風流で丸みのある金魚鉢の中を泳ぐ金魚の姿を愛でることが目的で、水草だらけの水槽では泳ぐ姿が見られない」そんな理由から、自然とはまた違った過酷な環境下で過ごすことになるのです。
金魚の平均寿命は8~15年とだいたいわんこと同じくらいと言えます(ギネス記録では43年が金魚の最長記録だとか!)。私が幼い頃にお祭りの金魚すくいでもらった金魚。ひと夏越せた記憶がありません。今考えれば飼う環境、飼える環境ではなかったとハッキリわかります。
この休まらない環境がわんこにも当てはまると感じることがあります。
わんこが休まる環境・休まらない環境
わんこが好む落ち着いて休まる場所とは、ほら穴のような身を潜められる場所や、臼状のような身を埋められるところなどです。
決してサークル自体が全て悪いと言いたい訳ではないのですが、その使い方・活用の仕方(トイレトレーニングなどでは効果的に機能します)に課題点があるおうちが多いと感じます。頭上を含めた四方八方から丸見え状態では心身共に休まらず、寝ていたとしてもちょっとした物音や動きに目を覚まし休息を阻害します。
このわんこに対してこのサークルは長時間滞在(一日の大半をここで過ごさせているそう)にしては狭すぎます。写真左手が玄関になるのですが人影が見えたり来客があると真正面で遮るものもなく丸見えでワンワンキャンキャン吠えまくるとのこと。設置場所にも問題がありわんこを休ませない条件が揃っていると言えます。
私たちの家には屋根があり壁もあります。でもそれは閉ざされている訳ではなく、外と繋がる扉や窓がありその窓には大抵の場合カーテンがついています。わんこが充分な休息が得られるよう屋根や壁、カーテンを。だからといってフルクローズにする必要はありません。だってほら穴はフルクローズではありませんし偵察ができなければ安心もできません。チラリとこちらを伺えるような状態が好まれます。
クレートが好まれることも多いですが、テーブルやイスの下に収まっていたり、家具などの隙間に安心したように挟まっている姿なども目撃します。屋根に守られ、壁にもたれ掛ることは安心をもたらします。
クレートごと囲い庭付き一戸建てのような素敵な使用方法もあります。やむを得ず長くなる留守番なども。
サークルを使用する場合、ただ閉じ込めるような鑑賞用金魚鉢状態にならぬように。
金魚とわんこ、それぞれの種や個体のニーズに合った環境活用を!
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