「普段どんな風にお散歩に行っていますかー?」
普段の様子をお聞きするために聞いたりするのですが、この質問で時折飼い主さんから謝られてしまうことがあります(汗)
「ごめんなさい、私右利きなので犬を右に歩かせています」と。
ぜーんぜん!謝っていただくことではないですし、間違ってなんかいないと思うのです。
家庭犬とその飼い主さんのためのウェルビードッグスクールでは「左側じゃなきゃダメ!」ということはありません。
なぜこの飼い主さんは謝ったのか。きっと一般的なトレーニングの概念というか昔ながらのイメージからくるのだと思われます。「犬の訓練」というのをご存知な方は「犬は左」と固定されて教わっている場合が多いようです。
なぜ「犬は左」か。
諸説あると思われますが、日本の「訓練」の元となっているのが警察犬・軍用犬の訓練の流れで「攻撃である銃などの武器を右側、防衛である犬を左側」というものがあります。
また、日本式の狩猟(マタギ)とは少し違いますが、レトリバー(回収犬)との狩猟は左厳守です。ガンドッグと呼ばれるレトリバーの仕事は、銃(=ガン)で撃ち落とされた獲物を回収しに行くことです。獲物を撃つ時にレトリバーは銃の近くにいるわけですが、撃った弾の薬きょうが右に飛び銃の右側は危険なので左側にいさせるのです。
日本の交通ルールからもあると思います。基本的には人も車も左側通行なので車などとの接触事故防止の為に道路の左側を歩くなら左側に。
でも、道路事情や状況によっては道路の左側では困ることがあります。
暑い日に日影を歩かせてあげたい時、雨上がり水たまりをよけて通りたい時、前方から小学生の一団が歩いてくる時などなど。
状況によって右にも左にも、そして前にも後ろにもつかせて歩くことができればわんこのストレス軽減、事故防止など円滑にお散歩することができると思います。
ただし、「わんこの好き勝手し放題で右に左に縦横無尽」では困ります。わんことのある程度の意思疎通をもって「今は右側を歩いてちょうだい、ありがとう♪」というようなやりとりのもと歩けると家庭犬、特に都市部に暮らすわんこにとっては安全と言えるでしょう。
自転車やバイクにひかれそうになりヒヤっとした、というような話を聞いたことがあります。特に小型犬はドライバーからの発見が遅れがちです。「カーブを曲がったら前方から来ていた自転車のペダルに引っかかりそうになった」という危機一髪なわんこや「郵便屋さんのバイクに“邪魔だ”と言われて通り過ぎざまに犬を蹴られた」という方も。
公園までに行く道のりや交通量の多いところを歩く際は、わんこは右・左どちらでも車道ではなく歩道側を歩かせてあげたいものです。
わんこの体の左右バランスを考えると「ずっと左」のような偏った歩かせ方よりも左右バランスよくできるとよりよいです。長年片側にいることで背骨や頸椎などの骨格、筋力にも歪みが出てくると言われます。
散歩の出始めは左側で帰りは右側を歩かせよう、とかちょっとチャレンジしてみるのも良い刺激になるかと思います。
ウェルビーではわんこに右や左のかかとの位置に来てもらうことを「ヒールポジション」と呼んでいます。その位置にいることの連続が「ヒールウォーク」となります。
日本式の言い方だとヒールポジションのことを「脚足(きゃくそく)」と言い、ヒールウォークのことを「脚足行進」と言います。
右も左も慣れてしまえばどうってことないことですが、慣れるまではお互い違和感が生じるかもしれません。人間でも右利きのひとが左手で文字を書くような、脳トレをしている状態と言えます。
いつも左側にいるわんこに、右側で「オスワリ」のリクエストをするとポカーンと途方にくれてしまうことがあります。左側での「オスワリ」は知っているけど、この景色(右側)はいつもと違うぞ?というような顔をします。
全くの余談ですが、右・左・前・後ろにも来るように教えるのも楽しい課題になりますが、少し足を開いて「足の間」に来てもらうのも面白いかもしれません。
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