出張ドッグトレーニングという仕事を通して、長年に渡り飼い主さんご家族と愛犬の様子を見させていただく中で「わんこってやつらは素敵な魔法を使うなぁ」と感じることが多々あります。
例えば、引きこもりがちだった飼い主さんがわんこの為に外に散歩に出るようになったり。人見知りだった飼い主さんも愛犬を通してわんこ仲間ができ、今や老若男女隔たりのない交流を持てるようになった方も。社会復帰できた、明るくなった、などの様子を見聞きしてまいりました。
はたまた、体調を崩し気力・体力ともに落ちていたけれど犬育て・わんことの活動を通して病状も回復し元通り以上の活気になった若者も複数目の当たりにしてきました。
個人だけでなく夫婦、家族間の絆もわんこの魔法を目撃してきました。
きっかけは「わんこの問題行動」で、当初はそれぞれが相手のせいにしがちだったり、家族のひとりにだけ負担が大きく掛かっていたのが、わんことのトレーニングを通して一緒に解決に向けて話し合ったり、時には評価し合ったりして「夫婦の(家族の)結束が強くなった」という声を聞かせて頂いたこともあります。
他にも「自分ひとりが頑張らなくちゃと背負い過ぎていた。いっぱいいっぱいだった○○(わんこの名前)は正に自分自身そのものだった。」と、この方は自らの生活を見直し「頑張るところと緩めるところ両方大切。自分が余裕を持たなくちゃね。愛犬から教わった」とトレーニングを振り返っていらっしゃいました。
わんことの生活は「かわいい」「癒し」などの楽しい面だけでなく、手間や労力もかかるし思い通りにいかないこと多々あり、「お悩み行動の問題」や「病気」そして「別れ」などで悩まされることもあります。
そんなわんことの暮らしの中、全てにわんこ達からの魔法のメッセージがあると感じます。
わんこ達はどんな魔法を使って人間を訓練しているのでしょうか^^改心した人間はわんことの素敵な第二ステージを迎えたりします。
家族全員ガッツリ噛まれるという「お悩み行動」があり、一時は「山に捨ててこようか、でもそんなことしたら被害者が増える」と思い悩んでいたご家族。でもトレーニング以来噛まれることもなくなり、お互いの理解もコミュニケーションも深まり外飼いだったのがおうちの中でも過ごせ唯一無二の存在に。今は虹の橋の住犬となってしまいましたが飼い主さんの良い変わり様はあの子のもたらした魔法だったと感じます。
また「病気」というのも避けたいものですが、愛犬の病気・闘病を通して「何気ない日常の大切さ、愛おしさを教わった」「犬生短いのだからこれからは毎日が楽しくなるように一緒に過ごしていきたいと切に思います」と前向きになれる魔法をかけたわんこもいます。
なんだかんだ言い訳をしてお散歩をサボり気味だった飼い主さん。愛犬の病気がきっかけで愛犬の体調を見ながら毎日お外に出るように。そのわんこは病気以前よりも一層元気になったように思います。
そして悲しいけれど愛犬との「別れ」。別れは辛くとも悲しみや思い出を共有できる家族がいて「家族の存在のありがたさを知った」という声もありました。悲しむ自分に対して辛抱強く話を聞いてくれ「旦那を見直した」という声を聞きました。
そんな当たり前かもしれないことに気付かせてくれたのはあの子…。
いろんな感情をもたらしてくれたのはあの子…。
喜怒哀楽。わんこからもらういろんな感情。
わんこってやつはいなくなってからも我々に色々な感情をもたらしてくれます。それが哀しみであっても愛おしいと感じてしまう。どんな魔法を使っているのでしょうか。
そんな素敵な魔法もある中、まだ魔法にかかっていない飼い主さんからは「先生!一発で言う事きかせるような魔法はないの?」とか「テレビでやっているような一瞬で言うこと聞かせるのってどうやるの?」という魔法を知りたがります。
愛犬との暮らしの中で黒魔術(?)のような近道はないと感じています。
愛犬のお悩み行動が元でトレーニングを受けてみたら知らなかった愛犬のことがいっぱい見えてきて「人間の言い分だけでなく犬の目線になって考えられるようになった」という声は多く聞きます。まずはわんこを知ることから始まるのではないでしょうか。
唯一飼い主さんができる魔法があるとすれば、それは「手」がキーワードかもしれません。深呼吸してリラックスさせた手をゆっ~くりと愛犬に触れる。手のぬくもりと愛犬の体温を感じ「手当て」ができます。穏やかに触れることができればきっとその時の飼い主さんの顔は穏やかな笑顔なはずです。その様子を見て愛犬は安心するはずです。どんなお薬よりも効果があるのではないでしょうか。
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