急に肌寒い日もたまにはありますが暑いと感じる日が増えてきました。
お散歩では半袖で歩く飼い主さんも多く、わんこは特に柴犬など腰やお尻辺りに世界地図のように死毛が浮き出ている様子を見かけ季節です。以前の記事「わんこと掃除~被毛~」で換毛期がある・ない犬の話題に触れていますが、アンダーコートを持つわんこは保温力のある冬毛から夏モードに換毛の季節ですね。
貫録のあるわんこが夏毛になるとスッキリと細身になりちょっぴり貧相に見えてしまったり、逆に夏毛になっても見た目が変わらず「毛量かと思っていたら太っていた!ダイエットしなきゃ!」と気が付く飼い主さんも…。
そんな換毛期になると思い出すわんこと飼い主さんがいます。
「うちの犬、ブラシとかコロコロを持つだけで怒るんです」
このわんこが嫌がるブラシとは、いわゆるスリッカーと呼ばれるタイプ。コロコロは粘着テープを転がすタイプのわんこ飼いには欠かせないお掃除道具です。
「小さい頃は多少嫌がりながらもやらせたのに急に飛びかかるようになった」と。ブラシはできないし、洋服にコロコロをする時は別の部屋でコッソリやらないと飛びかかってくるというのです。
どんな風にお手入れをしてきたか掘り下げて色々と話を伺っていくと「私が犬でも噛みたくなるよ!」って感じてしまいました。
その子は仔犬の頃から束縛されることが平均以上に苦手だったことも一因なのですが、換毛期で浮き出た死毛の束を抜くことが飼い主さんの快感となり一気にきれいになるまでしつこくスリッカーブラシで一網打尽にしたとのこと。更にブラシを終えた後、仕上げにコロコロでこれまたしつこく取った、というのです。
100歩譲って!浮き出た死毛をモリモリ抜く作業は「豊作♪」と収穫気分で夢中になる気持ちはとてもよく分かります。そしてわんこも「気持ちいい~♪」という表情や態度でブラッシングを受けているのであれば良いコミュニケーションのひとつと思います。
しかし!『自分にとって心地良いことが、相手(わんこ)にとって心地良いこととは限らない』
「犬(全体や表情)」を見ずに「毛(ごく一部)」だけ見ている状態では気持ちをくみ取ることが難しく嫌がっていることに気が付かない事態が起きたのです。
そりゃ急に体のあっちこっちを押さえられ、スリッカーで毛を引っ張られ、いつ終わるか分からない。もしかしたら擦過傷を起こし痛いこともあったかもしれません。仕上げのコロコロ粘着テープは死毛以外のまだ抜けない毛も引っ張り、やはり痛かったことでしょう。
大抵こういう夢中になっている時の飼い主さんの表情は真顔&無言のことが多く、わんこにとっては全てが心地良くない状況…そりゃ拒否しますよね??
グルーミングとは
体を拭いたり、ブラッシングしたり手入れ全般のことをグルーミングと呼びます。このグルーミングとはヒトで言えば身だしなみ、動物では毛づくろいや羽づくろいです。
保健衛生面(「綺麗にする」「健康チェックする」など)ばかりではなく、精神衛生面(コミュニケーション)とも繋がっています。
元はと言えば出産の時に母犬が仔犬を舐める行動からグルーミングが始まります。
舐拭(ねいしき)という舐める行動により分娩の際の胎膜が破られ取り除かれます。更に、舐める刺激が仔犬の肺の活動を喚起し呼吸を促進し、羊水で濡れた仔犬を舐め乾かします。また、新生児は刺激性排泄で母犬が陰部や肛門を舐めて刺激することで排泄が促されます。これらの母犬の舐拭がなければ仔犬は生きていくことが困難です。
母犬の「舐める」行動と、人間がわんこを「なでる」行動はとても似ています。
ただ母犬は毛のモツレや毛玉をほぐすほどのグルーミングはしません。
ブラッシングに慣らすには一気にやろうとせず、ご褒美や休憩を上手く使いながら心地よいことが前提でちょっとずつ慣らしてあげられると理想的です。
ブラッシングに夢中になってガシガシやらず、毎日数分ずつでも健康チェックとスキンシップを兼ねて心地よいグルーミングを心掛けることをお勧めします。
ちなみに上記のわんこはどうなったかというと…当たりの柔らかいラバーブラシに替え、わんこの方から体をスリスリしてもらう動作を引き出し自らブラシするゲームとすることができました♪